おしおき(リズ青/のぞみぞ/R-18)

希美と付き合った。

それは別々の大学に行って、5月を超えてから彼女が私のアパートに来だして、段々遊びにくる頻度が上がって来た頃。確か希美は酔っ払ってたと思う。飲み会場所がたまたま私の家に近かったらしい。簡素な『今から行っていい?』というラインメッセージ。希美は高校時代と変わらず勝手だった。だけど、いいよ、と許してしまう私もまたあまり変わってない。予定あるときは流石に断るようになったのは変わったかな。

「おじゃましまーす」

部屋に上がって上着を脱ぐと早々にソファーに寝転ぶ希美。希美とお話したいのに。少し寂しくなりながら、ソファの前にしゃがんで希美の顔を覗きこむ。頬がほのかに赤くて色っぽい。いつも強気な目が眠そう。んん、みぞれぇ、と舌足らずな甘い声で呼ばれて、ふふ、と笑いと愛しさが込み上げてしまう。

「ねむーい」

希美の手が伸びて肩を揺さぶられる。優子がここにいたら、「みぞれに近づくな!この、酔っ払い!!」と怒られるだろう。そして、私に言うだろう。「みぞれもたまには怒っていいんだよ!?こいつは痛い目に合わないと懲りないわよ!」と。

「希美、今日はいっぱい飲んだの?」
「うん…」

甘えた声。かわいい。手を伸ばして髪を撫でる。いつもなら、笑いながら上手く避けられるのに、今は気持ち良さそうに目をつぶってる。いつもこうなら嬉しいな。すっかり機嫌の良くなった希美は溶けた目でこちらを見て口を開く。

「みぞれさぁ」
「何?」

「あたしと付き合うー?」

その瞬間、私はロボットのように「髪を撫でる」という動作を停止する。頭に岩石で殴られた気分だった。私が今までどんな努力をしても手に入れられなかった言葉、もはや諦めかけていた言葉がこの適切でないだろうタイミングでいとも簡単に安売りされていたから。私は知ってる。身体に染み込んだ経験が言う、希美はまた何も考えずにノリで言ってる。明日には忘れてるのだろう。希美は勝手。勝手だ。勝手すぎる。私の気持ち、もう知ってるはずなのに。自分は選ぶ勇気はないのに他人の心をかき乱して繋ぎ止めるなんて。許せない。身体が怒りと悔しさで熱い。

「付き合っても、希美、明日には忘れてるでしょ」
「忘れないってばー」
「じゃあ、付き合っていい?」
「あはは!!みぞれ、珍しくノリ良いー」

希美が口を閉じる前にキスをする。え、と反射的に手で抵抗されるけど、軽く手を握って阻止する。

「あっ、やだ、みぞっ、んんっ」

初めてのキスを好きな人と出来たけど、あまり上手くいかない。お互いのタイミングがあわなくて、舌が変なところに当たったり、たまに歯が当たったりして。ドラマのように上手くいかなくてじれったい。だけど唇と唇が触れ合う瞬間が身体の芯まで気持ち良かった。甘い声が癖になる。 希美もおそらく初めてで、ぼんやりとしてる。

「…キス、しちゃった、みぞれと」と真っ赤になりながらぽつりと言ったのが可愛くて、頬に唇を寄せると肩をビクッと震わせる。

「いや?」
「い、いやじゃ、ないけど」
「そう」

言葉の先を聞かずにそのまま頬にキスをすると、「ひぃー」とまた可愛い声が聞こえた。

「希美、付き合うと言ったから私、付き合う」
「そ、それはジョーク!」
「希美は私の事好きじゃない?嘘言ったの?」
「え、と、好き、だけどさ」

じっと希美を見つめると、希美の目が文字通り泳ぐ。大好きのハグ以来、希美は私に弱くなった。私が希美以外の人の話をすると、こっちを見るように引き止めるし、思わせぶりな態度取るし、大学入っても私の事見て!と言わんばかりの行動を取る。そんなことしなくても、私は希美が好きなままなのに。頭の中の優子はまた言う、「みぞれもたまには怒っていいんだよ!?こいつは痛い目に合わないと懲りないわよ!」と。

「希美」
「はい?」
「おしおき」
「え」

酔って碌に動けない希美を全裸にして、紐で手を縛り、目をタオルで隠す。

「みぞれ、怖い…外して…んっ」
「駄目」

腕から太腿まで指の表面で身体のラインを確認するようになぞっていく。酔った希美はそのゾワゾワする感覚だけで感じる様子。私の手から離れようと仰け反る。希美の肌は柔らくて、張りがあって、気持ちいい。

「み、ぞれ、くすぐったい、からぁ!」
「くすぐったいんだ」

手に希美の身体のラインを覚えさせたあと、豊満な胸に手で包む。希美の胸は私の掌からはみ出てしまう。特に他人と比較したことないが、細いのに平均以上はあるように思う。艶のある溜息が聞こえる。

「んっ…あっ….ふぅ…」

舌で立ち上がった乳首を擽ると、希美は身体ごと震えだす。どうやら、この辺りが弱いよう。片手で、片方の乳首を刺激しながらもう片方を口に含む。

「あっ…あんっ、あっ…」

舌先でもてあそぶと、普段より1オクターブ高く甘い声が出て、それを聴いて音に満足する。希美は私の楽器。私の指と唇で思い通りの音が出る。ぴん、っと、強く乳首を指で弾く。

「あぁあっ…!!」

またピンっと弾き、舌で転がす。

「あぁっ!んんっ!!あっ!!」

歯で軽く噛み、啜る。

「いっ…!?んんっ……!!」

ほらこのとおり。アルコールで感度が高く仕上がった希美は最高の楽器。
もっと、良い音を鳴らしたい。太腿を掴み、脚を広げさせると、希美は首を振る。

「みぞれ、だめっ、そこはダメっ!!」

抵抗する脚をM字に倒して、その根元に顔を近づける。

「ダメ、汚いからぁっ!!ひゃぅっ!!」

初めて見る性器の形に驚く。好きな人のとはいえ、その生々しい形状は少しグロテスクだ。フグを見つめるのと同じようにそのままあごを両腕に置いて観察する。みぞれが息するたびに希美は震える。

「ね、ねぇ、みぞれ?何してるの?」

その無言が目隠しされ脚を広げられている希美の羞恥心と不安感をくすぐっていたらしい、濡れたそこがヒクつき次々と透明な愛液が垂れてくる。思わず、頬が緩む。

「希美、濡れてる。カワイイ。」
「そこ、はぁっ、かわいく、ないからぁ、ん」
「嬉しい」
「なん、で、よ、あんっ!!」

濡れたそこにしゃぶりつく。上の突起を指で擦り付けながら、舌で舐めあげる。

「あっ、あぁっ、ああっ、はっ!!」
「希美、気持ちいい?」
「んっ、気持ちい、あんっ」
「….ずっと舐めれそう」

とめどなく出てくる愛液を舌で舐めとっていく。舌に無味さを感じ、指を突起を擦るたびに希美の高い声を聴いて身体が熱い。好きな人に奉仕する行為に夢中になってしまう。熱に犯された希美は生暖かい刺激に耐えられず、太腿で私の身体にしがみつく。反射的にとは言え、希美に求められる気がして、感激してしまう。舌が疲れて、少し休憩すると、希美が真っ赤な顔をして震える。希美、どうしたの、と聴くと、あ、とか、う、とか言い澱みだす。無言で言葉を待ってると、痺れを切らした希美が情けない声で懇願する。

「つっ…み、みぞれぇ、もっとぉ、っお願い…!!」

希美のプライドや立場的に下だと思ってた私に対する優位意識を全て諦めて、劣情のために必死で懇願したのだろう。その瞬間、胸の奥がきゅん、と絞られ、希美に対する愛しさが更に増していく。希美は優しくて美しい決断をしたリズでもない。彼女の幸せを願い、遠く広い空に飛び立った青い鳥でもない。

「ただの」欲望に弱い醜い人間。

「うたって、希美」

だけど、私にとってこんなにも美しくて。こんなに素晴らしくて。こんなにも愛しくて。唯一の存在で。愛さずにはいられない。

「あっ、あんっ!!あんっ!あっ!あっ!!あんっ!!」

希美を四つん這いにさせて、覆い被さりながら、日本の指を中に挿入し、テンポよく奥に突いていく。肌に希美の汗と皮膚の熱が張り付いて心地よい。指を曲げ、生暖かさの中にザラつきに触れると、希美は特に鳴く。そこを重点に攻めていく。無意識だろう、希美が私の指を求めて腰を振る。
快感を求め、髪を振り乱しながらお尻を突き出し必死に腰を振る姿はなんとも動物的で美しかった。出し入れを繰り返すと、二本の指がぎゅう、ぎゅう、と律動的に締めつけられる。絶頂に近いのだろう。
だから。敢えて、指を止めた。
汗ばんだ希美のお腹に片手を回して、耳元で優しく囁く。無理やりの大好きのハグ。

「希美、私のこと、好き?」

ビク、と兎のように反応する希美。一呼吸置いて、「好き、だよ」と小さく呟いた。

「聞こえない」

腰を動かそうとするのを手で静止する。絶頂前の生殺し状態で希美はたまらない様子だ。

「希美、大好きのハグ。私の好きなとこ言って?一個言うたびに動かしてあげる。」
「え。え、えっと…オーボエが上手く、あっ!」

ズブ、と指を奥に刺す。

「努力家で、あんっ….」

抜いて、またゆっくり刺して。

「優しくて、んんっ!!」

抜いて、指を曲げてザラつきを擦って。

「美人…でぇっ!!」

弱いと所を優しくタップして。

「手が綺麗で、あ、あっ….意思が強く、あんっ!!」

グリグリと奥で手を回して。急所を外して出し入れして。

「一人でも努力できるとこ!!ふっ…!うっ」

息絶え絶えに語る希美に見えないだろうけど、健気にも私の好きなところを必死に考えて言う姿に思わず頬が緩む。もう頭が溶けて何も思いつかないのか、希美は泣き声になりながらお尻を震わせながらねだる。私にとって希美はすべてが可愛いから、すべてが効果的だし、逆効果でもある。

「すきぃ、好きぃっ!!だから、早くぅ!!指入れて!!動かして、よっ!」

泣いた希美の涙を舐めて、髪を撫でながら優しく問う。今なら希美は本当のこと話すだろう。

「ねぇ。どうして、付き合って、と言ったの?」
「…忘れたよっ、そんなこと…」
「希美はそればっかり」

躊躇する希美の中の入り口近くに指をかすかに動かしぬるい刺激を与え続ける。焦らされ続け、希美はすでに限界だった。

「ん、同期の男の子が、みぞれを紹介、しろ、って。なんだかむしゃくしゃしてっ、みぞれは渡さないって思って…、ヤケクソにお酒もすごく飲んじゃって、みぞれに会いたくなった」
「…え?」
「だからぁ、みぞれが、好き!!欲しいの!全部好きだからぁ、本当だからっ、付き合うからぁっ!!早くっ!みぞれの指欲しい!!」

なんだ。そうなんだ。胸につっかえてたものが希美の言葉で青い鳥が飛び立ったように一気に解放されて、私は頬に暖かいものが伝うのを感じた。胸の鼓動が激しくて、嬉しいという感情が全身に駆け巡る。きっと明日には希美は覚えてないだろう。でも、アルコールで引き出された本人も気づいてない潜在意識は本当に違いない。

「いいよ。希美、もっとお尻あげて。希美をイかせてあげる。」
「あんっ!!あっ!やっ!!激し!!イクっ!!イクっ!みぞれ、みぞれ!すき!!大好きっ!!!」
「うん。希美、私もだいすき。愛してる。」

私の指を希美は締め付けると、大量の愛液を私の掌に濡らしながら希美は頭からクッションに崩れ落ちた。希美の足の震えがしばらく止まらなかった。奥からふやけた指を抜いて、液がもったいないから 希美の開いた口の中に入れてしゃぶらせる。希美は楽器を演奏する私の指を舐めることに背徳感を感じてるみたい。夢中に指に舌を這わせる。動かすと苦しい顔するのに必死に舐める姿を見ると、また熱くなり、そのまま首筋に吸いついて、花を咲かせる。希美、と呼ぶと、身体が反応するのを感じる。唇にキスをして。

「もう一回、ね」



鳥のさえずりが聞こえる。カーテンの隙間から刺す光が眩しい。頭痛と酷いだるさに耐えながら起き上がる。あれ、ここ、みぞれの部屋じゃん。周りを見渡して、何故か肌寒くて、ぶるりと震える。

「あれ、裸?」

何故か手に赤い紐の跡がある。暴れたかな、私。

「わ!」

身体を見ると、至る所に赤い跡が付いている。

「き、キスマーク!?」

こんなにつけるものなんだ、と感心してると、もぞもぞと布団が動く。ヤバイ、誰だ、と思ったけど、みぞれに決まってる。

「希美?」
「お、おはよう、みぞれ」
「おはよ。希美、風邪引く」

不意に手を引かれ、布団に逆戻り。頬を撫でられ、綺麗な顔が近づいたかと思うと唇を重ねられる。そのキスの瞬間、フラッシュバックが起こる。自分がみぞれに何度も何度も「好き」と連発して叫んでる像が脳裏に想起される。

「うそぉ」

私が固まってると、みぞれは私が寒くならないように布団を肩まで掛け直しながら、首を傾ける。その首にも赤い痕があることを確認し、頭を抱える。

「ね、ねぇ、みぞれ。私達、昨日何やってたの?」

恐る恐る聞くと、眉尻を下げ、みぞれは至極優しい微笑みで「おしおき。」とのたまった。

そして、私達は付き合ってた。


END

(防音で良かったね)

2018年5月6日pixiv掲載

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