踊り子の夢幻劇(局長×ハーメル/R-18)

 重い微睡みの中で誰かが呼ぶ声が聞こえて、目が覚める。ほっ…という安堵の溜息が耳元で聞こえた。瞼を開けると側にいた副官が心配そうな顔で見つめていた。

「良かった。起きましたか。どれだけ眠っていたと思っているんです?」
「……どれだけ寝ていた?」
「49時間、約2日です。無茶し過ぎです。毎度の事ですが、今回ばかりは駄目かと思いましたよ」

 見慣れた呆れた顔に申し訳なさが生まれてくる。彼女の目の下には濃い隈がくっきりと浮き出ており、いつも几帳面で身なり整っている彼女が化粧もしていない。どれだけ心配を掛けさせたのかそれだけでも理解してしまう。ゆっくり身体を起こそうとすると、全身に痛みが走った。

「つっ……!!」
「動かないでください!」

 副官が暴れる患者に対する看護師の様に肩を押さえつける。

「脳震盪、全身打撲、軽度頚椎損傷、複数箇所の肋骨骨折、左前腕骨折、脛骨骨折、鼻骨、頬骨骨折、外傷性気胸、一部内臓損傷…まだありますよ。悪戯に医療費を増やさないでください」

悪戯ではないのだが。
身体を見ると、成る程、病衣の下は包帯で全身覆われており、処置されただろう痕の痛みが響く。

「必要経費だ」
「今はそんな冗談聞きたくありません。この子達もずっと局長の看病していたんですからね」

 身体は動かせないが、両手に温もりを感じる。視線だけ向けると、右手にヘカテー、左にヘラがいて、手を握っている。徹夜で看病してくれていたのか。コンビクトとはいえ、まだ子供。途中で布団に寄りかかって寝ている。

「……悪かった」
「素直にそう仰っしゃえば良いんですよ」

2人の頭を撫でようとしたが、痛みで動けなかった。恐らく副官が言っていた以上の病名はまだまだあるだろう。

「あと局長、治安局から目覚めたら直ぐに報告を、と言付けを預かっています」
「そうか、わかった」

もう一度、無理やり身体を起こそうとすると、ヘラが振動で起きる。

「ちょっと、アンタ起きて……って!!何やってんのアンタ!!」と突然起きたヘラに頭を叩かれ、またベッドに沈み込み、逆戻りになる。

「ヘラ、やり過ぎ。局長死んじゃう」

 いつから起きていたのか(始めからかもしれない)右から眠りの浅いヘカテーがヘラを諫める。

「だって、この死にたがりがまた無茶するから!!」

 私に指差しながら、ヘラが愚痴を言う。それには同意をしているヘカテーがこちらに顔を向ける。ずっと一緒にいるからか、その無表情の小さな変化から怒りを感じた。かなり、怒っている。

「局長」
「…なんだ」
「もう無理しちゃ駄目。動いちゃ駄目」
「仕事だ。いち早く報告しないと」

 口答えすると、有能で優秀なナイチンゲール副官がため息を吐きながら私とヘカテーの間に口を挟む。

「局長がそう言うと思いまして、呼びましたよ。彼女を」

 彼女?と口にする前に医務室に誰かが入る音が聞こえた。その「誰か」はヘラやヘカテーにとっては意外な人物だった様で、一気に部屋の空気を変わるのを感じた。

「えっ、あの綺麗な白いお姉さん!?」

 ヘラがミーハーな声を上げる。うわっ!近くで見ると顔小さい!肌キレー!!とあたかも芸能人に会ったような感じだ。首も固定されているため視線を頑張ってそちらに移すと、見るからに異様な存在感を放たれているのを感じ取れた。枷が、反応している。

「こんばんは、局長」

 水色の長い髪に緋色の瞳が特徴の女性。その薄地の紫の衣装を纏った体躯は細くしなやか、手足は長い。佇まいは儚くもその輝きは隠せず、一目でディスシティ一のスターダンサーであることが理解出来る。
S級コンビクト、ハーメルだ。

「え、何故?」

更に頑張って副官の方を見ると、この質問は既に想定されていたかのように副官は答え始めた。

「彼女の他者への回復能力、速度は他のコンビクトと比較しても卓越しています。瀕死の状態では能力の使い過ぎでコンビクトの精神にも異常を来す恐れがありますが、今なら彼女は安全な治癒は施行出来ると判断しました」
「そんなの不要だ。彼女にそんな事頼めない。自分で起き上がれる…」

 自分のために生きてほしいのだ。こんなこと彼女に頼めない。また身体を支えようと腕に力を入れるが、副官に押さえつけられる。そして、耳元で言われる。

「局長、大丈夫ですよ。彼女の申し出ですから。今回ばかりは言う事を聞いてください」

 その勢いは次抵抗したら銃を突きつけられそうな位の形相だった。ここまで来たら仕方ない。折角の副長の好意だ。それに直ぐに治したいのは本音だ。この場は甘えるしか無さそうだ。

 「いいなー!せいぜい楽しんでね!局長」とニヤニヤしながら茶化すヘラに「局長、ちゃんと治して…」と心配するヘカテーに「では。部屋の外でお待ちしていますので」と淡々と業務をこなすナイチンゲール。三者三様の台詞を残して部屋の外に出て行く。

(別にここにいてくれてもいいのでは?)

 正直に言うとこの白く綺麗な女と2人きりでいるのは気まずい。

「はじめましょうか」

 流れる様な声が上から降ってくる。ハーメルが近づいてきて、微笑んだ。今ならピエロの死瞳の子供達の気持ちがわかるかもしれない。彼女は永遠に若く、美しい。その佇まいはまさしく、女神の様だ。

 ギシ、とベッドが軋む音が聞こえ、ベッドに重力が掛かるのを感じる。先程ヘカテーがいた場所にハーメルが座っているようだ。髪を撫でられ、頬を手の甲で優しく撫でられる。

「酷い傷。また無茶したのですか?」
「仕事だ。そんなに無茶はしてないつもりだが」
「ふふ、あなたの仲間の心配する気持ちが凄く……理解できます」

 手でなぞられた部分の傷がみるみる癒えていく。これがS級コンビクトの力。知ってはいたが、改めてその威力に感動する。

「いっ……!!」
「ごめんなさい。少し我慢してください」

 ゆっくり首を支えられ頭を浮かせられると、首から下の神経が響きうめき声を上げる。その後頭を豊満な胸に顔を埋め込まれるように優しく抱きしめられる。柔らかく生温かな肌の感触に羞恥心が芽生えて、慌てて抵抗して離れようとするが、彼女に赤子を抱きしめる様に宥められる。頭から頸、肩、背中まで、ゆっくりと撫でられる。その度に傷が不思議に癒えていく。ひとつひとつの所作が丁寧で、優しい。彼女の性質を表していた。
 
 静寂な部屋に自分の鼓動が聞こえてくる。こんなに重度の怪我をしたが、運良く心臓は動き続けている。その鼓動を感じ取るために私の胸に彼女が耳を近づけ微笑む。無邪気で、しかし、どこか妖艶さを感じる笑みだった。

「鼓動が、踊っていますね」

 自分の高揚を感じ取られて、自分が逮捕し収容したコンビクトに欲情してしまった事に対してバツが悪い気待ちを覚え美しいダンサーから目を逸らす。その瞬間を彼女は逃さなかった。

「目を離さないでください。私を……見て」

 それは、一人のスターダンサーの純粋なエゴ。頬を白い両手で包まれ、緋色の双眸に吸い込まれるように自分の姿が捉えられる。耳元で囁かれ、抵抗を止め力を抜くと、ゆっくりとした動きで口付けられる。

「んっ……」

 柔らかな無味な舌で絡められる。敵から攻撃を受けた衝動で欠けた奥歯や痛みに耐えるために噛み切った唇も彼女に触れた後は治っていく。

「はぁっ……んんっ…」

 甘い感覚に脳内を浸され、溺れそうになる。揺れた景色にぼんやりと複数の水色の海月が浮遊していのが見え、ここに幻覚が展開されていることに気づく。

「ハーメルッ……んんっ……!!」

 枷を使おうと考えたが、舌を啜られ、更なる感覚に力が抜けそうになる。

「局長、私は決してあなたに悪いことはしません。私に任せてください。これは、ただの治癒行為ですから。ただ、委ねて下さい───」

 髪をとかされながら囁かれ、私はため息吐く。何せ今は全く身体が動かない状況であり、権能も使えない。無闇に枷を使って体力を消費するのは得策ではないように思う。彼女がこう言っているし、経験上今の彼女は信頼出来るだろう。何かあれば、枷で繋がられたコンビクト達が助けに来るだろう。

「わかった、信じよう」

 私はハーメルのか細い首に痛みで重い腕を巻き付ける。受け入れられた行為に彼女は笑みを深め、唇にキスをした。

 病衣をゆっくり脱がされ、胸が露わになる。包帯も剥がされ擦り傷や打撲傷で赤紫に塗れた痛々しい体が剥き出しになる。自分で言うのもなんだが、グロテスクで他人にとても見せられるものではない。それでもハーメルは慈しみ深く至極大切な宝物の様に丁寧に触れていく。彼女の手は温かく優しくて───また焦ったい。

「んっ…」

 手のひらが胸に触れる。胸の傷が徐々に治り、刺激と外気寒さにピンッと勃った乳首が主張してくる。その後下腹部を撫でられ、内臓をも含め次々と傷が回復していく。流石に奥の臓器だと時間がかかるようだ。

「ぁっ…んっ……」

 子宮辺りに手を置かれ、心地良い温かさが肌に触れられ生理的にたじろぎ腰を揺らす。

「局長」
「んっ……なんだ」
「さっきから感じてるの……ですか?」

 指摘され初めて自分の胸や腰が彼女の手に媚びる様に動いていることに気づく。顔が熱くなる。

「い、いや。すまない」

 局長という立場上欲に流される訳には行かず、硝子の様に脆い取り繕いをする。側から見ると、立派な立場を利用したセクハラだ。次から腰を動かないように力を入れる。
 ハーメルは少し考える素振りを見せ、下腹部にある手を動かし、下着まで手を滑らす。そして、ハーメルの細長い人差し指が私の陰部を掬う様にしてツーッとなぞる。一瞬にして甘く腰が震え、小さな嬌声が上げてしまう。彼女の指先に溢れた蜜が紛れもない証拠品として上がってしまう。自分はこの美しい舞姫に欲情しているという事実だ。恐る恐る彼女の表情を窺うと、意外な反応を示した。

「嬉しい……です」

 優しい笑みを浮かべ、ハーメルは蜜を舐めとる。そのどこか耽美な光景に綺麗で無垢なものが自分のせいで汚してしまった様な背徳感を覚えて目を逸らす。

「そんな、もの……汚いから口にするもんじゃないっ……!!」
「汚ないなんて、言わないで下さい。局長は特別…ですから」
「ダメだ」

 頑なな私の頬をハーメルは両手で包む。間近でその薔薇色の目で見られるのは落ち着かない。その目は慈愛に満ちており、その優しさがより一層背徳感や罪悪感に苛まされる。
 
「局長。情愛はそれほど悪いものではないですよ。それに眠ってはいましたが私は子供じゃないですから。私に委ねて……」
「ハー、メルッ……」
「本当にやめて欲しいなら、枷を使って私を拘束して下さい。局長、私はただ……あなたに安らぎを与えたいだけですから」

 ハーメルは一度頬に口付けると私の足元に移動し、下の病衣も脱がしていく。下着も剥がされ、濡れた陰部が露わになる。外気に触れてまた少し腰が揺らしてしまう。彼女は私の両手を指で絡め、奥に舌を沈めていく。

「んっ…んんっ……んっ…」

 ピチャピチャと水音が静かな部屋に響く。痺れる様な快感が腰に広がっていく。彼女の舌は温かく、くすぐったいが気持ちいい。

「どんどん、溢れていきますね」

 ジュルッと啜る音に太腿が震える。指が腹側の突起に触れ、優しい手付きで刺激を与えてくる。ピンッと弾かれ、声が出る。弱点を発見し、舌で中を刺激されながら陰核を指で弾かれ続ける。

「局長。声を我慢しないでもっと歌ってくださいね?」
「あぁっ……!!」

 二本の指が奥まですんなりと侵入していく。待ち構えていたかの様に中は侵入を受け入れ指を奥へ奥へと迎えていく。軽くキュッと締め付けては離すを繰り返している。その蠕動は絶頂が近い事を示しており、自分の息も荒くなっていく。
 ハーメルは指を入れたままゆっくり体を起こし顔を近づけて、蕩けるようなキスをする。私は快楽に溺れたぼんやりとした目で目の前の女神の様な、魔女の様な現実感のないダンサーを見つめる。

(どうして、止めるんだ?)

 無意識にそう訴える目になっていたかもしれない。

「綺麗な目。ずっと目を離さないで下さいね…」
──私から

 赤い目に魅了される様に囚われる。キュウゥッと興奮で下腹が締め付けられる。

「踊りましょう、局長」

 同時に彼女の長い指が中を刺激するスピードが速くなる。膣は膨らみ、ほぼ全てが性感帯となっている。

「あっあっあっあっあっあっ……!!」

 与えられる無限の快楽に最早声を抑える事が出来ない。遠くで幻想の海月達が踊る様に蠢く。それはこの空間が現実ではなく彼女が作った幻想だと言う事を意味している。恐らくこのハーメル自体もそうだろう。その事実が幾らか心の中で安心させ、目の前の舞姫に身体を預ける。

「あっはぁ……ハーメル!ハーメルっ……」

 手足はいつの間にか回復し動けるようになり、刺激に耐えるために目の前の均衡の取れたスタイルの良い身体に腕を首に、両足を細い腰に巻き付ける。他人に触れられる事は苦手な彼女だが、私に対しては何故か例外らしい、ダンスに答えるように温かい腕で腰を抱きとめられる。

「とても、綺麗です」

 彼女の目は光悦し、彼女自身も幻想にのめり込んでいるようだ。舌を絡め取られ、全身が刺激で痺れて突き抜けそうな感覚を覚えて、必死でハーメルにしがみつく。

「イッ、イクッ……!!」

 その瞬間勢い良く、大量の愛液を噴き出して、恐らく幻覚であろうハーメルの服を汚してしまう。
 息を切らしながら、脱力してベットに全身が沈み込んでいく。ハーメルはまだ締め付けられている指の感触を確かめて、絶えず愛液を垂れ流し指を咥え込んでいるだらしのない膣を見つめている。舞台はまだ終わらないようだった。

「あっ……!!ハーメル、い、いやだっ、もう無理っ……!!」

 また指を動かされ、絶頂を達したばかりの敏感な体がすぐに高まって行く。彼女は背後から回り体勢を変える。指は折り曲げられ、当たりどころが変わり腹側の膨らんだ部分を刺激される。既に出来上がっている膣は外部の異物を受け入れる様に膨らんでいる。身体は自然に前傾姿勢になり刺激を求めてしまう。左手で胸を揉まれ、指で乳首を捏ねられ首筋を舌に沿わせられる。背筋にゾクゾクとした感覚が這い上がる。彼女の方も快楽に溺れていく私の姿に高揚したのか肩を舐めると、そこを思いっきり噛んだ。

「痛っ……あっ!!」

 彼女らしからぬ行動に不意打ちを突かれ、また気質なのか痛みをきっかけにまた感覚が登り詰める。まるで敵のコアが割れた瞬間。
 その瞬間を狙ったかの様に指の刺激を速められる。ガクガクと太腿が震え、律動的に膝が跳ね上がる。

「あっ…あっ…!!はあぁっああああっっ………!!」

 またプシャアァッ!!と愛液が噴き出して彼女の手を濡らす。絶頂に震えながらも彼女の柔らかい身体に背を預けると、髪を優しく撫でてくれた。

「お疲れ様でした。最後に綺麗にして…くれますか?」 

 濡れた指を私の口に近づける。自分の匂いに噎せかえりそうになるが、治癒のお礼だ。素直に口を開け丁寧にしゃぶり取った。彼女は指を抜き取るも褒めるように頭を撫でられた。まるで子供のように扱われた気分だった。

 ハーメルは静かに私をベッドに横たわらせ、病衣を整えた後布団を掛けると、そっと長い蒼髪を耳に掛けながら近づく。愛おしそうに私の頬を撫で、その唇に口づけた。もう海月達は消失している。その唇の感触が妙に現実感があり、ここが夢か、うつつかわからずに混乱して思わず口を開く。

「あなたは幻覚?それとも、現実?」

 その問いにハーメルは哀しいような笑みを浮かべて、歯で私の唇を強めに噛んだ。痛みに小さく呻き声を上げると、「ごめんなさい」と一言囁きその美しいダンサーは幻のように消え去っていった。

 目を覚ますとノックの音が聞こえた。陰鬱な表情のナイチンゲール副官が重い足取りで入ってくる。私の健康な姿を見て、驚愕の表情を見せた。

「局長、どうしたんですか!?」
「……えっ?」
「怪我は!?」
「副官がハーメルを呼んだのでは?」
「S級コンビクト、ハーメルを?……彼女の能力の極楽幻相は危険であることを局長はご存じでしょう!?呼ぶのは危険過ぎます!」
「だが、彼女が……治した……」

 副官が頭を抱える間に、ヘラとヘカテーが病室に飛んで入ってくる。

「局長!!あれ、元気じゃん!?心配して損したじゃん!」
「局長…無事…?どうして…?」

 安堵するヘラの一方で私が重度の傷を負っていた瞬間を見ていたヘカテーは疑問が生まれた
ようだ。成る程、どうやら初めから幻覚を見せられていたのか。

「……ハーメルだ」

 答えを言うと、自分の相棒コンビクト達が二者二様の反応を示す。

「あの白くて綺麗なおねえさん?ナイス!やるじゃん、おのおねえさん!」
「流石S級、絶大な治癒能力…恐ろしい……」

 ブツブツ呟いていたヘカテーが私の顔に手を当てる。

「でも良かった…」  

ヘカテーが無表情ながら安堵しているのを感じた。そして、何かに気づいた。

「局長。ここ、治ってない……」
「ん?」

ヘカテーが親指で私の唇を拭くと、血液が付着した。それを見てハッとする。
───最後にハーメルに噛まれた傷。

「アンタ、治してもらった後さっき噛んだんじゃない?幾らあのお姉さんが可愛くて超美人でもワザと傷ついてまた治して貰おうなんて怒られるよー?」
「……違う」

 あれは、現実だったのだ。どこからどこまでが幻想で、どこからどこまでが現実かは正確にはわからないが、あの最後の口付けは確かな現実であったのだ。

(それを気づかせる為に噛んだのか?)

 それはあの感情をあまり見せない美しいダンサーの所有欲、また幻覚で終わらせようとする自分に対するささやかな抵抗なのかもしれない。
一途で執着心が強い。彼女が自分のことをそう表現した通りか。

 私の考え込む態度に何か勘づいた副官の女の視線が痛い。これ以上何言っても墓穴を掘ることになることは予想できたので黙秘することにした。後で三人が帰った後で肩の噛み痕があるか確認しなければ。そして、FACへの報告が終われば事実確認のためハーメルに会いにいかなければ。

「はぁ…」

 すっかり回復した身体をようやく起こし、ため息をつく。身体は治りはしたが、頭が痛い。カメリアンといい、やっぱりカタリシスという奴らは侮れない。


END


(☆と☆の間が幻覚の設定でしたが、その限りではありません───)

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