眠り姫たちの休息(局長×ハーメル)

 目を醒めると、すぐ目の前に空色髪の綺麗な女が裸で傍に寝ていてハッとする。

「ああ……やってしまった」

どうやら自分は牢屋の中、ダンスを教えてもらっていたコンビクトの寝室で寝てしまっていたらしい。時計を見ると、いつもなら仕事に戻らないと行けない時間であることに気づく。血の気引いてガバッと起きてすぐに床に落ちてある制服を集めて起き上がろうすると、腰に絡みつく白い腕が邪魔した。

「ハーメル?」

髪を撫でて起こすと、その美しいコンビクトは低血圧なのか目を伏せたままふらふらと身を起こす。シーツが腰の滑らかな曲線に沿ってズリ下がり、豊満な胸が二山露出される。白雪のような身体には赤い痕が全身至るところに残され、局長は自分の自制心のなさと彼女に対する独占欲の強さに反省する。

(……それは仕方ない。あまりにも彼女が可愛すぎるからだ……!)

同時に言い訳も残しながら。まだ眠そうで惚けた顔が可愛くて、腕で引き寄せその額にキスをする。彼女はまだ眠いのか、局長の胸に頭を押し付けうとうとしている。

「ハーメル、起きて…仕事に戻らないと…」

優しく肩を揺さぶると、ようやく伏せていた長い睫毛が上がり大きな緋色の瞳がこちらを覗かせた。その美しさは何度見ても見慣れない。彼女を芸術の宝物と言う者がいるのも頷ける。

「おはよう」

白い頬を撫でて挨拶すると、「おはようございます…」とその端正な顔がふわりと和らいだ。

「局長…」
「うん?」
「今日は……休みと聞いていましたが……?」
「……」

日付を確認する。どうやらボケていたのは自分の方だ。今日は休日だ。安堵からそのまま腰に絡んでいる腕の力に従ってベッドにポスッとまた寝転ぶ。

「それなら、まだ……一緒にいれますね」

シーツにくるまったハーメルが風邪引かせないように裸の局長の身体に乗っかる。シーツに包装された豊満な胸が目の前で揺れ、その谷間に悪戯にキスをするとハーメルは恥ずしそうに笑った。

「ここ、好きですよね……」

手を胸元に導かれ、白い乳房に触れる。女性特有の肉の柔らかさと皮膚の手に張り付く感覚が心地よい。まるでマシュマロの様な感触。その奥の鼓動は速く、手に振動と熱を伝わる。指先が不意に乳首を掠めると「んっ…」と擽ったそうに女は身を捩る。

「あなたに触られるの、すき……」

溶けた眼で見つめられ、どちらともなく唇を重ねる。ちゅっ、ちゅ、と小さな啄む様なキスを続ける。愛しさが増していき、局長は強く抱きしめ、ハーメル特有の匂いを肩口から吸う。その甘い香りは温かさに相まって妙に安心感を感じて、眠気が誘う。ハーメルも同じようだ。すんすんと自分の胸の匂いを嗅ぎながら、自分に温もりを求めている。
先はおあずけ。ひとまず最優先事項は贅沢な二度寝だ。ダンサーの頭の下に腕を入れ腕枕で寝かせ、包み込むように抱きしめる。

「おやすみ、ハーメル」
「おやすみなさい…局長」

二人の体温がひとつになり、混ざり合い、深い微睡みに沈んでいく。それは、とても幸せな休日だった。

END.

蛇足。

ある日、ヘラが歩いていると、前方に誰かの牢屋から局長が出てくる姿が見えた。退屈な日に面白い獲物を見つけからかうネタを見つけた!と小さなコンビクトは走って追いつき、ニヤニヤしながら背中を叩く。

「局長じゃん!今日オフじゃなかったっけ!」

叩かれた局長は少し眠そうな顔でヘラを見る。

「ああ、ヘラか。休みの日だが、寝てしまった」
「へぇ、あんたも疲れるとかある……」

のね、と続けようとしたが、局長にしては珍しく着こなしが乱れており、そのよれたタートルネックの折り返し近くの皮膚の赤みにピンク髪のコンビクトが気がつく。それは、紛れもなく所有の印。

「う゛わ。あのおねえさん、案外独占欲強いんだね」
「どういうことだ?」
「いーやー?何でもない。アンタ今日は出歩かない方がいいんじゃない?鏡見た方がいいよ」
「……?よくわからないが、そうするよ」

その後部屋に戻った局長が叫んだことは言うまでもない

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