ラビット・イン・ユア・ケージ(局長×ハーメル/R-18)

 今年はうさぎ年。新年明ける1ヶ月前にB級コンビクト・リザーがある突発的な提案をしてきた。

「MBCCの新年のお祝いにハーメルを招待してバニースタイルでダンスして貰うというのはどう?」

はるばるアポイントを取って、執務室に訪れたリザーが口にしたのはコレだった。相変わらず書類の山に囲まれている局長は重く長いため息をつく。

「却下だ」
「ありえないわ!その空っぽな頭で考えなさい?あの歩く芸術がバニーでダンスする姿なんて、来年しか見れないわよ!?」
「……そんな形でハーメルを使いたくない。彼女は自分のためにダンスをする約束をしているんだ」

芸術家の言う事は相変わらず理解できない。「はぁ。だからセンスのない人は嫌よ」と顔を歪めるリザーを無視して、書類処理を続けた。

「いいわ。じゃあ彼女がバニーダンスを望めば、局長さんは許可するのね?」
「…は?」

リザーは至極真面目に言い放ち、局長の机から踵を返し部屋から出ようとする。

「ちょっ……」

引き止める前にパタンとドアが閉まる。よからぬ事が起こる予感しかしなくて、局長は胃が痛くなった。彼女の言う馬鹿げた高尚な・・・趣味に付き合ってられない。



新年が明け、講堂で日々任務に励んでいるコンビクト達への労いを込め新年会をすることになった。

「……局長」
「わかっている。ナイチンゲール、何も言うな……」

そこにはリザープロデュースの白バニー姿のハーメルが華麗に、赤のバニー姿のプリシラがノリノリで踊っている。紅白のうさぎでちゃんと新年を祝う舞台に仕上がっている。リザーの能力で幻想の蝶が舞い、ハーメルの能力で雪の中に花びらが舞う幻想が観客席までに展開される。リザー自体舞台に関わっていた歴はなかったように思うが、持ち前のセンスでカバーされている。所謂、この刑務所で披露される舞台としては勿体ないくらいの出来栄えだ。観客席では何処から持ち込んだのかハクイツが密輸酒(本人はジュースと訴える)を配り、ゾーヤとナインティナインは新年K-1を始め、器物破損を繰り出されヘラを始めとした賭博が始まっている。

「現実逃避している中よろしいでしょうか?今日で羽目を外したコンビクトの違反行為が山ほどあります。聞きます?」
「いや、明日にしてくれ。今日は仕事の話はしたくない。胃が持たない」
「分かりました。こちらもできる範囲で見回りに行ってきます」
「……副官も適度に楽しんでくれ」
「はい、わかりました」

最早人が死ななければいい位だ。しかし、コンビクト達のガス抜きもある程度必要だ。彼らは刑務所の中だが、今この瞬間をたのしんでいるようだ。舞台が終わり、また次のショーンのライブが始まる。爆音で盛り上がるライブにしばらく背中を壁に付け遠巻きで聴いていると、舞台を降りてきたバニー姿のハーメルがこちらに近づいてきた。舞台の成功したのか満足そうな笑顔に、こちらも吊られて笑顔になる。

「局長……!」
「ハーメル、お疲れ様」
「舞台どうでしたか?」
「とても良かった。相変わらずあなたのダンスには魅力されるよ」
「ありがとうこざいます」

局長に褒められて嬉しそうなダンサーだが、局長としては複雑だ。

「リザーから言いくるめられて頼まれたのだろう?私は自分のために踊って欲しいんだ。あなたはとても優しいけど、他人のために踊って欲しくない。次からはちゃんと断りなさい」

そう窘めると、彼女は首を横に振る。

「いえ、これは……わたしのしたかったことなんです」
「本当に?」
「ええ、ここの皆さんと舞台を作り上げる……一人よがりじゃなくて、皆のために踊ることはとても楽しいことでした。それに……いえ。局長、大丈夫です。わたしはちゃんと自分のために踊っています」

うさぎ姿でそう言われても正直集中出来なかったが、その顔は充実感に溢れ、意志の持つ者の顔だ。彼女とその他コンビクトの関係も少しずつだが良好に構築されているようだ。彼女は自分の思う以上に周りから影響を受け、成長している。23年経てようやく自分で時を進めようと努力しているのだ。それらを感じとり嬉しくなる一方で、自分を必要とするスペースが減ってくる事を感じ「……そうか」と局長は少し寂しそうに答えた。
ショーンのライブが最高潮に盛り上がる。次は彼女のメイン曲だ。また観客のボルデージが上がるだろう。そんな中、不意に空っぽな手に隣から温かいものが触れる。ハーメルの手だ。それは自分の手を握り、うさぎ姿のダンサーは普段見られない少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。赤い眼、その長い耳、雰囲気から本当にうさぎを彷彿させる。踊った後なのか高揚し瞳が潤んでいるように見えた。

「局長、抜け出しませんか?」

その真近で見る美しさに心が締め付けられる。まいった、と局長は思う。局長はいつだってこの女には弱い。「はぁ……少しだけならな」と手を握り返すと、白うさぎは局長をその場から連れ去っていった。

「んっ……はぁ……んっんんんっ」

ハーメルは局長を自分の牢の中の部屋に連れていった。ベッドまで導き、白色のうさぎの衣装を着たコンビクトは看守を逃さないように膝に乗っかり、コートを脱がせながら唇を貪る。
うさぎは寂しいと死ぬという言い伝えがある。最近敵の量が多い作戦ばかりだったから回復役を担うことが多いハーメルの事を残していることが多かった。その反動か、はたまた兎の衣装もコンセプトとして燃え上がらせたのか、普段より激しく求めてくる。
舌を絡め、感触を味わい、啜る。そうすると、うさぎの様に赤い眼が蕩けるような目でこちらを見つめ、腰が震え後ろのお尻にある尻尾が震えた。いつもと違ううさぎの衣装に局長自身も心底滾るものがあったらしい、興奮でブルッと震えた。水着のようになっている下はもう既に濡れていた。局長の悪戯心が湧く。片膝を立てると、「これでしてみてよ、白うさぎさん」と服従100%のダンサーに言う。ハーメルは恥ずかしそうに「意地悪な…方ですね……」と言いつつ局長の両肩に手を添え従う。膝立ちで局長の膝頭の上に股を置き、擦り付ける。

「んっ……んっ……んっ……」

陰核と膣が擦れ、感覚に目を伏せている。気持ち良さそうだ。その姿も踊っているようで美しい。腰が揺れる度にうさぎのしっぽが揺れ、局長の接触しているズボンの膝頭の布が濡れてくいく。行為に夢中なのか、ハーメルは動きを止めない。局長がその細い腰を両手で掴んで止める。潤んだ赤い眼が開く。

「制服が濡れてしまったな」
「あ……ごめんなさい…」
「脱がせてくれるか?」
「はい」

ハーメルが局長の灰色のズボンを脱がし、また膝上に乗る。局長が指で彼女の太腿の間に触れると、入口だけでもひどく濡れていた。指を物欲しそうにヒクヒクさせている。

「欲しい?」
「欲しい……です」
「自分で、入れてみて」

聞くと、ハーメルは頷く。布をずらし、指を2本突き立て、ハーメルの股下に置くと、ダンサー自ら腰を下ろし、指をゆっくり飲み込んでいった。

「んんっ、んんんっ……あっ」

奥に差し込むと、うさぎは震え、全身で自分に絡みついた。じゅぼじゅぼと音をたてながら、彼女は腰を振り、豊満な乳房も大きくたわむ。

「ああっ……あぁ…!!気持ち良い……」

左手で腰を下に落とし、そのタイミングで右指を上に突くと、背筋に快感が走るようでビクビクと腰が震える。主張する乳首を口で咥えると、気持ちいいのか局長の顔を抱きしめた。胸に圧迫されながら、乳首を吸うと綺麗な声で喘ぎ鳴く。その声に局長はまた震え、高ぶらせる。子宮が降りてきて、奥で指の腹に硬いものが触れた。

「イキそう?」

答える余裕もなくコクコクと眉間に皺を寄せながら頷き、自分にしがみつくハーメルに自分も達しそうになる。奥に突き立てるピストン運動のスピードを上げる。

「んっ……!!あんっ…局長、イキます……!!」

指の中を膣が締め付け、収縮を始める。指先が濡れる感覚がする。ダンサーの身体が崩れ、局長の胸の前に倒れる。荒い吐息が耳元で聞こえ、押しつけられた胸にトクントクントクンと速く鼓動が叩いているのを感じる。首筋の汗を舐め取りながら、落ち着かせるように背中をさする。

「大丈夫か?痛くなかった?」
「はい…気持ち良かった……です」
「良かった」
「…あなたの鼓動の音は、いつも安心します……」

ハーメルは目をつぶり、自分の心臓の音を聞いている。兎耳を伸ばしたり折ったりしながらお尻の白い尻尾をイジり、局長は思う。

「コンセプトセックスも偶にはいいものだな」
「局長……声に出てますよ……」

お互いに笑い合い、またキスをした。

後日談。

「ひどいじゃない」

目の前のコンビクト・リザーが執務室で新年早々始末書の嵐を必死で書いている局長を非難する。視線を上げずに面倒くさそうに聞き返す。

「……何がだ?」
「決まってるわ!あなたとハーメルの関係よ!黙っていたなんて、私、赤っ恥かいた気分だわ」

やはり。局長は頭が痛くなる。

「……別に言う必要ないだろう。公にすることでもないしな」
「必要はあるわ!わざわざ彼女を交渉して説得する必要はなかったわ!」
「ほう……どのように交渉したんだ?」
「ちょっと局長さんがバニー好きである事を教えて若手画家にバニーの局長さんを描かせて贈与しただけよ!」
「……なんてことを……!?」

頭を抱えて、ため息をつく。後でハーメルに弁解しないもいけない。焦る局長に比してリザーは相変わらず涼しい顔だ。

「それにしても。ハーメルがあなたみたいな俗物的な人を選ぶなんて、見る目が無いわね」
「……うるさいな」
「でも、彼女のダンスは変わったのは確かよ。閉塞的なダンスから開放的へ。悲嘆さから歓喜や幸福感、表現の幅がかなり広がっている」
「そうか」
「妖艶さや官能美も備わったのも誰かさんのせいね。芸術を汚されるのは堪らないことだけど、俗物の中でもあなたはマシな方と思うことにするわ」
「……」

ペンが折れそうになるところを堪える。リザーは続ける。

「あの既に完成されたと思われた天才ダンサーはまだ才能を開花し進化を続けているわ。恐ろしいことに」
「……」
「今でさえもあんなに人を魅力し時に凶暴化させることもあるのよ?あなたに手懐けられるのかしら?」

皮肉を言うリザーに局長は「話にならない」と呟く。

「私達には枷という絆がある。これがある限りその心配はいらない。リザー、あなたも同様だ」
「……本当にあなたはセンスがない人ね。枷を絆なんて表現するなんて」

局長の反応に心底つまらなさそうにボブヘアの女はコメントする。

「まぁ、礼を言うわ。あの舞台は成功だったわ。新年はあなたにとって良い年になるといいわね」

芸術評論家はそう言って執務室から出る。きっと最後の言葉を言いにここに来たのだろう。素直じゃない奴め。局長は笑った。

END.

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